【亭主元気で留守がいい】全一(7/10)

    &esp;&esp;しかし、10分も経たないうちに、もう起きてしまった。シャワーを浴びて着替えると、また急いで出かけていったのだ。

    &esp;&esp;连勤のせいならもう仕方ないか。その时は见送りながら、よかったとでも思っていた。

    &esp;&esp;実はよくない。

    &esp;&esp;全然よくない。全くよくない。少しも良くないのだ。

    &esp;&esp;あのごが世界で一番面倒くさい奴なのに。毎日バカな话ばっかり言ってるのに、くだらないことばっかりしてるのに、こっちをいじめてばっかりいるのに。

    &esp;&esp;いつも死ぬほど腹を立てさせられているのに。

    &esp;&esp;それなのにそばにいてくれないと、周りの空気さえ何か违っているように感じている。

    &esp;&esp;…やっぱり受け入れられない。ダメだ。留守なんて最悪、全然良くない。

    &esp;&esp;あの人がいないとダメなんだ。

    &esp;&esp;どうやらもう一人でいるなんて想像もできなくなってしまったようだが。

    &esp;&esp;以前はずっとずっと一人でいただけなんだが。

    &esp;&esp;ただここ2年ほどで一绪に过ごす时间が少し増えただけで、たった数日会えなくなったことだけで、

    &esp;&esp;もうどうしても我慢できなくなってしまうのとは、なんて滑稽なんだ。

    &esp;&esp;ひとを駄目にする男だから、あの人は。

    &esp;&esp;しかし、最近涌き上がってきた不安は、たとえ自分の情けなさもあったにせよ、决して根无草のようなものではないと思う。

    &esp;&esp;というのは、先週、帰ってくるたびに、あの人はよく元気がなさそうに见えたからだ。

    &esp;&esp;あれほど疲れていたのだから、最近の数件は絶対に祓除任务ではなかったと确信できる。

    &esp;&esp;それは祓う仕事からの疲れとはとても见えないが、祓ったれ本舗のせいだと思っていたのだ。だって、「たまにはさー、僕のかっこいい姿を撮られるのは嬉しいけど、毎日めっちゃ撮られたら、どう考えても、絶対クソ退屈だもん!!」とご本人がおっしゃっていたから。

    &esp;&esp;あれほど静かだったので、心配なのは、ひょっとすると、あの人もちょっと不安を感じているのかもしれないということだ。

    &esp;&esp;何しろ时间が経つにつれて、例の一〇五大灾难の引き金となった出来事が、また繰り返されようとしているのだから。

    &esp;&esp;もちろん、あの人はそんなことを口に出すはずもない。

    &esp;&esp;ちゃんと打ち明けてくれればいいのに。

    &esp;&esp;きっと抱きしめてあげるから、絶対好きなだけ慰めてあげるから。

    &esp;&esp;素直にしてくれればいいのに。

    &esp;&esp;あの人の不幸をきっかけに、堂々と近づけることをこっそり喜んでしまうのは、あまりにも卑劣なことだと思うが。それでもいつも许してくれてありがとう、だいすきだ。

    &esp;&esp;とにかく、耻ずかしがり屋は元々そういうものなのだ。

    &esp;&esp;亲密に扱われていたからこそ、かえって耻ずかしくて直视さえできず、思い出したり、かき残したりすることがとてもできなかった。だから、本来ならこれ以上かき続けるつもりはなかったが。正直にいうと、今でもとても耻ずかしくて、なかなかかきづらい気がしている。

    &esp;&esp;ところが、9月1日にとんでもない出来事が起き、完全に気が変わったのだ。

    &esp;&esp;一昨昨日の夕方。半信半疑のまま、あの人に电话をかけてみた。

    &esp;&esp;信じられないことに、コール音が鸣り始めてすぐ、すんなりと出てもらえたのだ。

    &esp;&esp;予想通り、相変わらず「ん、ん」と、相手は适当に相槌を打ってくれた。多分、また话しにくい状况だったのだろうが。

    &esp;&esp;しかし、あの人、电话口で、口ずさんでいたのだ。

    &esp;&esp;なんとなく闻き覚えがある気がしてきた。头の中でメロディーを探してみると、すぐに思い出し、つい半フレーズほど口ずさんでしまったが。そのときこそ、やっと曲名に気づいた。

    &esp;&esp;「それ、『テイク&esp;ミー&esp;バック』かしら。」と寻ねてみた。

    &esp;&esp;相手は「うん」と返事してくれた。

    &esp;&esp;「…じゃ、『テイク&esp;ミー&esp;バック』ってどういうつもり???」と繰り返して确认し、「迎えに行かせるってこと?」

    &esp;&esp;すると、向こうからかすかな笑い声が闻こえ、少し间を置いて、「うん!」とはっきり返事してくれたのだ。

    &esp;&esp;「ゆっくりでね」と言ってくれてから、あの人は电话を切った。

    &esp;&esp;そこで车の键を手に取り、すぐ家を飞び出していった。到着した时、スリッパのままであることに気づいた。だが、これは仕方ないことだ。うちのパパがすでに助けを求めているのだから。夫が迎えに来てほしいと思っているのだから。

    &esp;&esp;その时の気持ちは、まるで以前保育园から「スズメがママを探してて泣いているよ」と初めて电话を受けた时のようだった。不甲斐ないママは一刻も早くうちの子を抱きしめたくなり、不器用な妻は自分の夫をすぐに连れ帰りたいと愿い、一秒たりとも待てなかった。

    &esp;&esp;目的地は远い、巨大な会场だった。

    &esp;&esp;大きな正门は闭ざされていたが、横にある侧门は键がかかっていなかった。力を込めて押し开けると、中には案内板があり、小走りで向かうべき会场へと进んだ。

    &esp;&esp;ロビーには様々な物音が闻こえていたが、気にしなかった。ただ、思い切り大きな音を立てて、両开きのドアを押し开けたのだ。

    &esp;&esp;人々は、远くにも近くにも、客席のあちこちに散らばって座っていた。そして、ドアが开く音に、视线がこっらへ向けられた。

    &esp;&esp;しかし、そんなことに気づく余裕はなかったのだ。

    &esp;&esp;一目で见つけた。

    &esp;&esp;たった一目で。

    &esp;&esp;一目见ただけで见つけられたのだ。

    &esp;&esp;あの人はステージに近いところに座り、周りは多分友人や同僚だった。他に谁がいたのかを确认できなかったのは、よそ见さえしたくなかったからだ。

    &esp;&esp;すぐ目の前にいたのだから。

    &esp;&esp;もちろんあの人もこっちに気づいた。口元はきつく引き缔まっていて、笑いをこらえるのに必死な様子だった。それでも、组んでいた足を下ろし、両膝を揃え、行仪よく见せようとしていた。

    &esp;&esp;今思えば、もっと考えてから挨拶でもしておけばよかったと后悔している。でも、その时はもう何も构っていられなかった。夫は家に帰りたいと言っていたのだ。夫は目の前にいるのだ。连れて帰らなきゃ。谁にも止められないのだ。その时はそう考え、それしか考えていなかった。

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